try! Swiftに参加してきた

http://www.tryswiftconf.com/

3/2~3/4の三日間、try! Swiftというカンファレンスに参加してきた。

33セッション * 30分という超濃密な構成で過去参加したカンファレンスの中でも最も充実した内容だった。特に、下のようなトピックが多かったような印象がある。

  • Protocol extensionなどのSwiftのパワーを使った、より洗練された実装方法の話
  • Swiftを使った関数型プログラミングの話
  • デザインやアニメーションなどUIにまつわる話

ちょうどいま直面していた課題に関わるようなトピックもあり、セッション後のQ&Aコーナーでスピーカーに話しかけて、ペアプロまでしてもらった。おかげでその課題はすっきり解決できた。

今回のtry! Swiftで最大の収穫は、英語を本格的に学ぼうと思うきっかけがあったことだった。それは、try! Swift公式アプリで自分のライブラリが使われていたことだった。

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公式アプリの開発者の方と直接お話しする機会があった。本当はもっと伝えたいことがあったのだけど、あまりに英語ができなくて、ほとんど伝えられなかった。このライブラリのように海外の開発者に伝えられるコンテンツをもてるようになったものの、肝心の英語ができないばかりに非常にもったいないなーと強く感じた。それがきっかけで先月から英語を勉強しはじめている。

SwiftCSVをフルスクラッチした

おととしSwiftCSVというCSVSwiftで扱うためのライブラリを作った。

けっこう思いつきで作ったので、あんまりちゃんとパースできないし、思ったよりissueがたくさん来てつらくなってしまったので、放置していた。仕事でもSwiftをまったく書けずにいて、Swiftを触るモチベーションも低かった。

今年に入ってSwiftをガンガン仕事で書くようになってモチベーションが復活したので、ひどい有様だったSwiftCSVをフルスクラッチすることにした。幸い、テストコードはギリギリあったので振る舞いは変えずに内部のコードを綺麗にし、Swift 2.1に対応した。

SwiftCSVを書くにあたって活躍したのはGeneratorTypeSequenceTypeというprotocolだった。これらはfor ... in文に渡すことができる独自のイテレータを定義できる。これらの使い方は以前Qiitaにまとめたので参考になるかもしれない。

これらを使うことで、「イテレートされる要素を作る責務」と「その要素を使う責務」を切り分けて、別々のオブジェクトとして定義できる。実際にSwiftCSVでは以下のように切り分けられている。

// CSV.swift

init(string: String, delimiter: NSCharacterSet = comma) {
    let headerSequence = HeaderSequence(text: string, delimiter: delimiter)
    for fieldName in headerSequence {
        header.append(fieldName)
        columns[fieldName] = []
    }

    // ...
}
// HeaderSequence.swift

struct HeaderGenerator: GeneratorType {
    typealias Element = String
    
    private var fields: [String]
    
    init(text: String, delimiter: NSCharacterSet) {
        let header = text.lines[0]
        fields = header.componentsSeparatedByCharactersInSet(delimiter)
    }
    
    mutating func next() -> String? {
        return fields.isEmpty ? .None : fields.removeAtIndex(0)
    }
}

struct HeaderSequence: SequenceType {
    typealias Generator = HeaderGenerator
    
    private let text: String
    let delimiter: NSCharacterSet
    
    init(text: String, delimiter: NSCharacterSet) {
        self.text = text
        self.delimiter = delimiter
    }
    
    func generate() -> HeaderGenerator {
        return HeaderGenerator(text: text, delimiter: delimiter)
    }
}

GeneratorTypeSequenceTypeを使うことで設計上はうまく整理できたものの、CSVパーサとしての機能はかなりショボい。ダブルクォーテーションに囲まれた,や改行を認識できていない。けっこう大変そうで僕だけでは対応ができないので、Pull requestを募集している。

HIGで推奨されているアラートをSwiftで効率的に組み立てる

最近、Swiftにおけるエラーハンドリングについて興味をもっている。エラーハンドリングの中でアラートを組み立てて表示するコードをよく書いたり、目にしている。アラートを実装する際に気をつけているのは、ユーザーが目にしたときになるべく怒らせないようにすることだ。ユーザーフレンドリーなアラートを実装する上で参考にするため、Human Interface Guidelines(以下、HIG)を読んでいる。HIGを読むと、アラートの実装にあたって問題点が見えてきた。

問題点

  • UIAlertControllerでアラートを組み立てるとき、テンプレのようなコードを長々書かないといけない。
  • UIAlertControllerを使ってHIGで推奨されるアラートを組み立てるには、HIGの理解と注意深い実装が必要になる。

解決策

Swiftの表現力を駆使して、テンプレのようなコードをなるべく排除し、HIGの中で望ましいとされるUIを効率的に組み立てられるような設計を考えた。HIGでは、アラートは1つまたは2つのボタンを持つべきで、ボタンが3つ以上の場合はアクションシートを検討すべきだと書かれている。アラートを1つのボタンを持つConfirmationと2つのボタンを持つSuggestionという2つのタイプに分類して、以下のようなenumで表現することを考えてみた。

enum Alert {
    case Confirmation
    case Suggestion
}

このAlertという型の値からUIAlertControllerを生成する必要がある。アラートに表示する情報はエラーオブジェクトから取得できると、エラーごとに表示すべき情報が統一されて効率的だと思う。そこで、以下のようにNSErrorを各caseに関連付け(前回記事を読むとNSErrorではなくFriendlyErrorTypeを使うべき場面だと分かる)、viewControllerというプロパティを定義した。

enum Alert {
    case Confirmation(NSError)
    case Suggestion(NSError)

    var viewController: UIAlertController {
        switch self {
        case .Confirmation(let error):
            let alertController = buildAlertControllerWithError(error)

            let cancel = UIAlertAction(title: "OK", style: .Cancel, handler: nil)
            alertController.addAction(cancel)

            return alertController
        case .Suggestion(let error):
            // 省略
        }
    }
}

ここでのbuildAlertControllerWithError(_:)NSErrorのもつ各情報を使ってUIAlertControllerを初期化するようなイメージだ。

Suggestionの場合、エラーから復帰するためのアクションをユーザーに提案することになるため、その「復帰するためのアクション」をRecoveryとして以下のように表現してみる

struct Recovery {
    let name: String
    let style: RecoveryStyle
    let recover: UIAlertAction -> Void

    enum RecoveryStyle {
        case Nondestructive
        case Destructive
    }
}

RecoveryStyleは復帰するためのアクションが破壊的(=アクション前に戻せない)か、非破壊的(=アクション前に戻せる)かを表している。なぜこれらを区別するかというと、HIGでは破壊的なアクションは赤字のタイトルにし、アラートの左側にボタンを置くべきとされているからだ。逆に非破壊的なアクションのためのボタンは右側に置くべきとされている。

Recoveryを踏まえると、Alertの実装は以下のようになる。

enum Alert {
    case Confirmation(NSError)
    case Suggestion(NSError, Recovery)

    var viewController: UIAlertController {
        switch self {
        case .Confirmation(let error):
            // 省略
        case .Suggestion(let error, let recovery):
            let alertController = buildAlertControllerWithError(error)
            let cancel = UIAlertAction(title: "Cancel", style: .Default, handler: nil)

            switch recovery.style {
            case .Nondestructive:
                let recover = UIAlertAction(title: recovery.name, style: .Default, handler: recovery.recover)
                alertController.addAction(cancel)
                alertController.addAction(recover)
            case .Destructive:
                let recover = UIAlertAction(title: recovery.name, style: .Destructive, handler: recovery.recover)
                alertController.addAction(recover)
                alertController.addAction(cancel)
            }

            return alertController
        }
    }
}

RecoveryStyleによってaddActionの順番を変えている。これによってHIGで推奨されているボタンの配置になる。

利用例

let alert = Alert.Confirmation(error)
presentViewController(alert.viewController, animated: true, completion: nil)

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let recovery = Alert.Recovery(name: "Recover", style: .Nondestructive) { action in
    print("Recover!!")
}
let alert = Alert.Suggestion(error, recovery)
presentViewController(alert.viewController, animated: true, completion: nil)

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let recovery = Alert.Recovery(name: "Recover", style: .Destructive) { action in
    print("Recover!!")
}
let alert = Alert.Suggestion(error, recovery)
presentViewController(alert.viewController, animated: true, completion: nil)

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まとめ

  • HIGに沿って実装するとユーザーフレンドリーなアラートになる(はず)。
  • HIGに沿って実装するのは、HIGの理解と注意深い実装が必要になる。
  • 上記のようなSwiftの表現力を駆使した設計によって、効率的にHIGに沿ったユーザーフレンドリーな実装を可能にできる。

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FriendlyErrorType

新しいエラーハンドリング

Swift 2でthrowを使ったエラーハンドリングが新たに導入された。従来のNSErrorを使ったエラーハンドリングの問題点は、メソッドNSErrorポインタの代わりにnilを渡すことで無視できてしまうことだった。新たに導入されたエラーハンドリングでは、throwsキーワードが宣言されたメソッドを呼び出す際にdo-catch文で囲うことを強制される。throwで投げられるエラーはNSErrorではなくErrorTypeというprotocolを実装した値だ。Cocoaフレームワーク内のNSErrorを使っていたメソッドthrowsを使うように置き換えられており、今後は独自のエラーを定義する場合はNSErrorではなくErrorTypeを使うのが望ましいと考えられる。しかし、ErrorTypeにも問題点はあり現実的な設計方針を検討する必要がある。

アプリ独自エラーの実装

NSErrorの代わりにErrorTypeを使っていく流れがあるものの、ErrorTypeにはNSErrorが持っていたlocalizedDescriptionuserInfoといったエラー情報がないという問題点がある。そこで、ErrorTypeを継承した新たなprotocolを定義するという方針を考えてみた。

protocol FriendlyErrorType: ErrorType {
    var summary: String { get }
    var reason: String? { get }
    var suggestion: String? { get }
}

このFriendlyErrorTypeを使って以下のように独自エラーを定義できる。

enum ApplicationError: FriendlyErrorType {
    case SomethingWrong
    case DecodeFailed([String])

    var summary: String {
        switch self {
        case .SomethingWrong:
            return "Something wrong"
        case .DecodeFailed(_):
            return "Decode failed"
        }
    }

    var reason: String? {
        switch self {
        case .SomethingWrong:
            return .None
        case .DecodeFailed(let fields):
            let failedFields = fields.joinWithSeparator(", ")
            return "Failed to decode following fields: \(failedFields)"
        }
    }
    
    var suggestion: String? {
        switch self {
        case .SomethingWrong:
            return .None
        case .DecodeFailed:
            return .None
        }
    }
}

また、CocoaフレームワークメソッドErrorTypeを投げるようになったものの、Alamofire等のライブラリを使う際にはNSErrorを使うことになるため、FriendlyErrorTypeを実装するようにNSErrorを拡張する。

extension NSError: FriendlyErrorType {
    var summary: String {
        return localizedDescription
    }
    
    var reason: String? {
        return userInfo[NSLocalizedFailureReasonErrorKey] as? String
    }
    
    var suggestion: String? {
        return userInfo[NSLocalizedRecoverySuggestionErrorKey] as? String
    }
}

なぜprotocol extensionではなく継承なのか

protocol extensionだとErrorTypeにデフォルトの実装を与えることになる。その場合、ErrorTypeとして渡されたエラーに対してメソッドを呼ぶと、すべてそのデフォルトの実装の結果が返るようになる。一方、FriendlyErrorTypeはただのprotocolなので、メソッドの結果はメソッドを実装する各クラスの結果を反映する。

extension ErrorType {
    var summary: String {
        return ""
    }
}

extension NSError {
    var summary: String {
        return localizedDescription
    }
}

let error: ErrorType = NSError(domain: "com.github.naoty.playground", code: 1000, userInfo: [NSLocalizedDescriptionKey: "Something wrong"])
print(error.summary) //=> "\n"
protocol FriendlyErrorType: ErrorType {
    var summary: String { get }
}

extension NSError: FriendlyErrorType {
    var summary: String {
        return localizedDescription
    }
}

let error: FriendlyErrorType = NSError(domain: "com.github.naoty.playground", code: 1000, userInfo: [NSLocalizedDescriptionKey: "Something wrong"])
print(error.summary) //=> "Something wrong\n"

エラーの利用例

FriendlyErrorTypeを実装したエラー型を実際に利用してみる。Alamofire、SwiftTask、Himotokiを使ってQiita APIを呼び出している。

return Task<Void, [Item], FriendlyErrorType> { progress, fulfill, reject, configure in
    Alamofire.request(.GET, "https://qiita.com/api/v2/items").responseJSON { response in
        switch response.status {
        case .Success(let value):
            if let objects = value as? [AnyObject] {
                var items: [Item] = []
                for object in objects {
                    do {
                        let item = try decode(object) as Item
                        items.append(item)
                    } catch DecodeError.MissingKeyPath(let keyPath) {
                        reject(ApplicationError.DecodeFailed(keyPath.components))
                    } catch {
                        reject(ApplicationError.SomethingWrong)
                    }
                }
                fulfill(items)
            } else {
                reject(ApplicationError.DecodeFailed(["root"]))
            }
        case .Failure(let error):
            reject(error)
        }
    }
}

NSErrorを拡張しているため、ApplicationErrorNSErrorFriendlyErrorTypeとして並べて扱うことができている。

FriendlyErrorTypeを使ってアラートを表示する実装は以下のようなイメージだ。

let title = error.summary

var message = ""
if let reason = error.reason {
    message += reason
    message += "\n"
}
if let suggestion = error.suggestion {
    message += suggestion
}

let alertController = UIAlertController(title: title, message: message, preferredStyle: .Alert)
presentViewController(alertController, animated: true, completion: nil)

以上のような方針に基づいたサンプルアプリケーションを用意した。

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Timepieceを0.4.0にアップデートした

Timepieceを0.4.0にアップデートした。ぶっちゃけブログの記事にするくらいならちゃんとCHANGELOGにしろという話なんだけど、技術的な詳細も少し話したいのでブログの記事にした。軽微なバグの修正と以下の2点が今回の変更点だ。

タイムゾーンのサポート

これがメインの変更になる。「サーバー側から受け取る時間のタイムゾーンiOSアプリケーションのタイムゾーンが異なっており、それらを比較したい」みたいなissueをもらったので対応した。「こういう感じのインターフェイスはどう?」みたいなのを聞いてたら「Sweet!」だのと褒められたので、その気になって実装してしまった。けっこう大変だった。

iOSでは、NSDateオブジェクトそのものにタイムゾーンは存在しない。システムで設定されるタイムゾーンNSCalendar経由で取得することになる。

NSCalendar.currentCalendar().timeZone

なので、今回のようなケースだと、NSDateオブジェクトそれぞれにタイムゾーンが存在するように見せる必要がありそうだった。なお、オフセットを調整することも考えられるが、時間を足し引きしてしまった段階でそれは別の時間となってしまう。同じ時間で別のタイムゾーンを持つNSDateオブジェクトが必要だった。実装方針としては、

ということを念頭に置いた。

ところで、TimepieceはNSDateを始めとするいくつかの既存のオブジェクトのextensionとして実装されている。extensionでNSDateオブジェクトにtimeZoneのようなプロパティを追加することは普通はできない。しかし、Objective-CのランタイムAPIを使って動的にプロパティを追加することで、これをなんとか実現させることができる。Swiftの場合でも、ランタイムAPIを使うことは可能だ。

import ObjectiveC

public extension NSDate {
    var timeZone {
        return objc_getAssociatedObject(self, &AssociatedKeys.TimeZone) as? NSTimeZone ?? calendar.timeZone
    }

    func change(#timeZone: NSTimeZone) -> NSDate! {
        // ...

        objc_setAssociatedObject(newDate, &AssociatedKeys.TimeZone, timeZone, UInt(OBJC_ASSOCIATION_RETAIN_NONATOMIC))

        // ...
    }
}

objc_から始まる関数がランタイムAPIだ。これらの関数によって動的にオブジェクトにプロパティを読み書きしている。change(timeZone:)で生成されたNSDateオブジェクトのみ動的に追加されたプロパティを持つ。タイムゾーンが異なるNSDate同士の計算も問題なく行われている。これは上述の通りオフセットの調整による実装ではないためだと思う。

playgroundの追加

機能というわけじゃないけど、リポジトリにplaygroundを追加した。それに伴ってプロジェクトからワークスペースに変更した。実際にTimepieceを試してもらうには、サンプルのアプリケーションを作ってPodfileを書いて…みたいなことをする必要がありとても面倒だったので、Timepieceが使えるplaygroundを用意した。

Pull request大歓迎

タイムゾーン周りの実装は正直あんまり自信はないんだけど、テストはちゃんと通ってるしまぁいいかくらいの気持ちでリリースした。観点が漏れている可能性は大いにありうるので、ぜひPull requestしてもらいたい。

「すごいHaskell たのしく学ぼう!」を読んだ

すごいHaskellたのしく学ぼう!

すごいHaskellたのしく学ぼう!

本書は一度は8章あたりで挫折したが、今回13章あたりまで読みファンクタ―、アプリカティブファンクタ―、モノイド、モナドといった概念がなんなのか理解とまでは言えないけど知ることができた。

一度は挫折したが今回またリベンジしようと思った理由は、今後モバイルアプリを開発していくにあたって関数型プログラミングの概念を理解して採り入れていくことが必要になってくると思ったからだ。Swiftletによる不変型の宣言やOptional型などの文脈付きの型など関数型プログラミング言語としての側面をもっていると思う。また、データバインディングSwiftBond/Bondなど)やJSONのパース(thoughtbot/Argoなど)といった場面で関数型プログラミングの概念が登場してきている。Swiftのポテンシャルを最大限に発揮して、堅牢で生産性の高いコードを書くには関数型プログラミングの知識が必要になってきていると最近感じている。

本書を読んだ結果として、データの構造について新しい視点を得ることができた。MaybeEitherといった概念を"文脈"と呼んでいるのが自分の中にはなかった発想だった。例えば、MaybeMaybe Intを区別して考えるのはとても抽象的だけど強力な考え方と思った。Maybeは「あるかもしれないし、ないかもしれない」という文脈を表し、Maybe Intは「Int型かもしれないし、何もないかもしれない」型を表している。これらを分けることで、文脈を保ったまま計算するという発想が出てくるのだと思う。文脈を保ったまま計算する段階として、本書ではFunctorApplicative、そしてMonadが登場してきた。

Swiftでは、Haskellにおける型コンストラクタにあたる概念がない。Genericsを使うことでMaybeのような型を表現することはできるが、ある型が型引数をとるのかとらないのか、とるとしたらいくつとるのかを知る術はない(はず)。Haskellではそれらは種類という概念で説明されている。Maybeの種類はMaybe :: * -> *だし、Eitherの種類はEither: * -> * -> *となっているので、それぞれ型引数を1つと2つとることがわかる。HaskellFunctorは種類が* -> *の型コンストラクタしかインスタンスにできないのだけど、こういう概念をSwiftで表現できない。

というわけで、Swift関数型プログラミングをするにはHaskellほどうまくはできないことがなんとなくわかった。Genericsなどで擬似的に表現するしかない。Functorfmapを以下のように実装してみた。

extension Optional {
    func fmap<U>(f: T -> U) -> U? {
        switch self {
        case .Some(let value):
            return f(value)
        case .None:
            return .None
        }
    }
}

let maybeOne: Int? = 1
let maybeTen = maybeOne.fmap({ x in x * 10 })

SwiftOptional<T>型はつまりT?型のことなのだけど、Optional型を拡張してfmapを追加している。return f(value)のところは暗黙的にU?型にラップしている。このように実装することで、Optional型のもつ「あるかもしれないし、ないかもしれない」という文脈を保ちつつ、中身の1というIntを計算している。

ここではFunctorだけを簡単に実装してみたが、これに加えてApplicativeMonadを実装するとより抽象的な計算が可能になってくる。JSONのパースなどを実装する際にはApplicativeの操作が必要になってきそうな感じがする。自分はまだ関数型プログラミングの実装を実際にしたわけではないので、理解したとは到底いえない。パーサーの実装をしてみたり、上で紹介したライブラリのコードを読んでみることで関数型プログラミングを実践的に理解していきたい。

#potatotips でTimepieceについて発表した

potatotips

資料

最近のTimepiece

  • GW前あたりから急激にバズってきた。一時GitHubのトレンドで1位になった。それまでは☆70くらいだったけど、もうそろそろ☆500になりそうな勢いだ。
  • それに伴っていくつかの要望をPull requestでいただいた。それらはほぼすべてmergeした。機能追加やバグ修正まで自分では見落としていた部分を指摘していただいて、多くの方に使われていそうだという実感がある。

イベントの感想

  • 最近はiOSではなくAndroidアプリ開発をしているので、iOS/Android両方楽しめて非常に良かった。
  • Timepieceを検討したけど採用を見送った方の意見を聞けたのが非常に良かった。そういう方の意見を聞ける機会は多くないからだ。いただいた要望について今実装方針を考えていて、ちゃんと形にしていきたい。
  • 最近気になっているResultについての議論はとても勉強になった。naoty/SwiftCSVでエラー情報を扱う際にResultが使えそうだと思っていた。ただ、議論を聞いてオレオレResultが乱立しそうな流れがありそうだというのを知った。そうなると、ライブラリ提供者が実装するよりも利用者側でResultを定義する方が利便性を損ねないのでは、という意見に変わった。
  • ドキュメントだけではよく理解できなかったDagger 2については、あまりよくわかってなかった@Provideについて理解が深まった。Androidのテストについて意見交換をさせていただいて、自分の意見は間違ってなさそうだという確信を得られたのもよかった。
  • その他、Android@Nullable, @NonNullはすぐに使おうと思ったし、Lastlaneやdeliverといったワークフローを自動化するツールも実践的な内容で勉強になった。